実際のところ、日本政府が国際社会に対して公海調査捕鯨の正当性を訴える根拠は、「調査捕鯨は国際捕鯨取締条約(ICRW)第8条に基づく国際捕鯨委員会(IWC)加盟国の権利である」というただ一点のみである。
しかし、ICRWの前段となる国際捕鯨取締協定が署名された1937年当時、現在日本が南極海と北西太平洋で行っている商業捕鯨と同規模の調査捕鯨はまったく想定外だった。条約を起草した鯨類学者も、「新種の発見等を目的に、規模としては10頭程度を目安に」と考えていたのである。それが1950年代以降、旧ソ連などが禁漁期に100頭規模の捕鯨を行う名目として使い始め、調査捕鯨の看板がIWCの規制の縛りを逃れる口実に用いられるようになった。日本による現行の調査捕鯨のモデルとされる、1978年に行われた240頭の南半球産ニタリクジラの調査捕鯨は、発足したばかりで赤字に陥った共同船舶の経営救済手段として、水産官僚が提案したものだった。
「科学的調査捕鯨の系譜:国際捕鯨取締条約8条の起源と運用を巡って」(環境情報科学論文集 '08/22号)
janjan
なるほど、そうだよね〜、調査っていうと「新種の発見等を目的に、規模としては10頭程度を目安に」ってのが自然だよね。調査捕鯨って一体、何を調査しているのか不思議だったが、長年の謎がひとつ解けたような気がする。
共同船舶の経営救済手段として、水産官僚が提案したものってことだけど共同船舶って、結局、水産官僚の天下り先ってことか。水産官僚の老後のために調査捕鯨の名目で将来の見込みのない産業に税金投入という図式が見えてくる。どうりでネット上で政治問題化するわけね。いつ事業仕分け対象になっても不思議はなさそう。鯨問題って天下り問題だったんだ。環境問題のようで、実際は別の側面を持つ問題って案外多いのかもしれない。
確かに、この目的で10頭程度だったら科学調査として「自然」ですよね。今の調査捕鯨の「不自然さ」に、もっと国内の多くの人たちに気づいてもらいたいと思います。